釜香 Pan-fire Aroma

釜香は釜炒り茶がなんで香りのいいお茶になるのか、の香りの秘密。5年かかって、なんとか釜香がわかってきた。

日本の釜炒り茶は香りがなんとかいっても、煎茶みたいに味のお茶になっているとおもう。品評会も入賞するお茶は煎茶の入賞するお茶とすごく似てきて、うまみ中心のフレイバーが評価のベースになっている。

何年かまえに熊本の五家荘で今でも釜炒り茶をつくっている船本さんのところに行ってきた。手炒りのお茶を作っていて、釜香のヒントがでたとおもった。

釜炒り茶はこげが入ると、味が煙くなる。でも焦げるくらいの気持ちで炒らないと、釜香はでない。

わたしも何回も失敗して、こげと炒り足りない間のデリケートなバランスの釜香が、炒っているときにその香りがときどき鼻ににおいがする。 花の香り。ウーロン茶みたいな深い花の香りじゃなくて、さっぱりした花の香り。何の花か? できたと思って、お茶にいれると釜香はなくなっている。 青い鋭い香りはでるけど、違う。

私もこの青いさっぱりの香りが釜香とおもったこともあったけど、自分で出せないから、釜香は釜炒りのこおばしい香りでいいのでもない。

こおばしいだけなら、ローストのレベルででる。釜香じゃない。

船本さんが言ってたことで、「釜炒り茶の本当の香りは、みる芽じゃ出ない。」
リーフがソフトすぎて、思い切った炒りに耐えられないんです。

ウーロン茶をみればよくわかる。ウーロン茶はみる芽で摘まない。香りが死ぬ。出開きが基本。そんな硬い葉だから、揉む機械も台湾式のものじゃないともみきれない。

「おいしいお茶がのみたい」の波多野公介さんも、お茶の香味は釜炒り茶が一番よく出るといっている。でも本当の釜炒りの香りがでているものはいくつも飲んでみたけど、ほとんどない。今の日本で釜炒り茶を飲む人も煎茶みたいな釜炒り茶を飲みたい人が増えてるから。それとも、地域の食べ物が日本どこでも、もっと同じようなスタンダードなものになっているから、お茶もそれにあったような煎茶風の釜炒り茶になっているからか。

日本の釜炒り茶が釜香がでないのは、品種がやぶきたがメインになってるのもあるとおもうけど、肥料つかいすぎもあるとおもう。肥料いれると、成長はいいけど、葉が薄くなる。葉が薄いのは煎茶とか、抹茶とかは有利でも、釜炒り茶の釜香にはよくないとおもう。

簡単に言うと、釜香はいつもこげの裏側にある味みたいなもの。おもいきりで焦げるくらいの気持ちで、どの釜炒りの製法にもこのこげが出ないようにする対策がある。一回の葉の量、回転のスピード、水分とか、あと一回でできる処理の量でも、ぜんぜん変わる。ステンレスか、鉄釜かでも違う。

あるときに中国の安徽省の緑茶をいくつかもらった。とくに太平猴と六安瓜片は釜香のことがよくわかる。太平猴魁は中国の大葉の緑茶の品種で、大きいものは10cmくらいのものもあった。野生種、在来種は小さいものがおおい、でも香りはいい。六安瓜片の珍品の香りはおどろいた。最初はジャスミンのフレーバーのついたものかとおもったけど、袋をあけて何日かあとでほとんどなくなっていた。葉の端の焦げかたも、あるのはわかるけど、煙くさくない。

焦げるのが問題じゃなくて、焦げ方。焦げても、煙くささじゃなくて、釜香に変わる炒りかた。今年のTest Batchで完全に焦げしすぎたとおもっても、できてその日にテイスティングしたら、ぜんぜん煙くさくなくて、ジャスミンとオーキッドの香りがある。でも3日で消えてしまった。

有機も化学肥料もなしで3年して、うまみのくささがなくなってきて、香りが落ち着いてきた。虫の害もほとんどなくなった。

最近の私の作る手炒り緑茶はウーロン茶かと聞かれることがおおくなった。最近はあんまり手炒りもしないけど、毎年新茶すこしだけ「初心」をわすれないようにで、手炒りもする。

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